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ヒ酸アンモニウム

更新日：
ヒ酸アンモニウムの化学構造式

ヒ酸アンモニウム（Ammonium arsenate）は，化学式 (NH4)3AsO4 で表される無機化合物です。

目次
  1. 1名称
  2. 2化学式と構造
  3. 3物質情報
  4. 4構成要素
  5. 5熱力学的性質
  6. 6溶解度
  7. 7製法
  8. 8化学反応
  9. 9参考文献
  10. 10関連物質
  11. 11関連カテゴリ
Amazon.jp で「ヒ酸アンモニウム」を検索
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名称

物質名称一覧

命名法
Nomenclature
名称
Name
代表的名称
Typical name
ヒ酸アンモニウム
Ammonium arsenate
組成命名法
Compositional nomenclature
ヒ酸アンモニウム
Ammonium arsenate
ヒ酸三アンモニウム
Triammonium arsenate
置換命名法
Substitutive nomenclature
ヒ酸アザニウム
Azanium arsenate
付加命名法
Additive nomenclature
テトラオキシドヒ酸(3−)テトラヒドリド窒素(1+)
Tetrahydridonitrogen(1+) tetraoxidoarsenate(3−)
別名
Other names
砒酸アンモニウム
Ammonium arsonate

化学式と構造

化学式一覧

化学式名称
Formula name
化学式
Formula
代表的化学式
Typical formula
(NH4)3AsO4
組成式
Compositional formula
(NH4)3AsO4
構造式
Structural formula
ヒ酸アンモニウムの化学構造式
その他の構造式
Other structural formulas
ヒ酸アンモニウムの化学構造式 (二重結合表記)
電子式 (ルイス構造式)
Lewis structure
ヒ酸アンモニウムの電子式 (ルイス構造式)
電子式 (ルイス構造式, 色付き)
Colored Lewis structure
ヒ酸アンモニウムの電子式 (ルイス構造式, 色付き)

物質情報

物質情報一覧

項目
Item
値
Value
名称
Name
ヒ酸アンモニウム
Ammonium arsenate
化学式
Formula
(NH4)3AsO4
外観
Appearance
無色の固体
Colorless solid
臭気
Odor
無臭
Odorless
モル質量
Molar mass
193.035 g/mol
密度
Density
–
融点
Melting point
–
沸点
Boiling point
–

構成要素

構成イオン

イオン
Ion
名称
Name
電荷数
Charge number
個数
Number
NH4+アンモニウムイオン13
AsO43−ヒ酸イオン-31

構成原子

原子
Atom
名称
Name
酸化数
Oxidation state
個数
Number
N窒素−33
H水素+112
Asヒ素+51
O酸素−24

原子の比率

原子
Atom
原子量
Atomic weight
個数
Number
原子比率
Atomic ratio
重量比率
Weight ratio
N14.007315.00%21.77%
H1.0081260.00%6.27%
As74.92215.00%38.81%
O15.999420.00%33.15%
NHAsO原子比率
NHAsO重量比率

熱力学的性質

相転移特性

項目
Item
値
Value
融解熱
Enthalpy of fusion
–
蒸発熱
Enthalpy of vaporization
–
蒸発熱 (25°C)
Enthalpy of vaporization at 25°C
–
その他転移エンタルピー
Enthalpy of other transition
–

標準熱力学特性

状態
State
標準生成
エンタルピー
ΔfH°
kJ · mol−1		標準生成
ギブス
エネルギー
ΔfG°
kJ · mol−1		標準モル
エントロピー
S°
J · K−1 · mol−1		標準モル
定圧熱容量
Cp°
J · K−1 · mol−1
結晶性固体−1286.2[1]–––
水溶液 (解離状態)−1285.66[1]−886.32[1]177.4[1]–
結晶性固体
3水和物
−2166.9[1]–––

溶解度

溶解性

反応
Reactive
混和
Miscible
易溶
Very soluble
可溶
Soluble
H2O水
微溶
Slightly soluble
難溶
Very slightly soluble
不溶
Insoluble

製法

酸と塩基の反応

ヒ酸とアンモニアが反応すると，ヒ酸アンモニウムが生成します。

ヒ酸とアンモニアの反応
◆
ΔrG−40.8 kJ/mol
K1.41 × 107
pK−7.15
H3AsO4ヒ酸 + 3NH3アンモニア
⟶
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム

塩基と酸性酸化物，水の反応

アンモニアと五酸化二ヒ素，水が反応すると，ヒ酸アンモニウムが生成します。

アンモニアと五酸化二ヒ素，水の反応
6NH3アンモニア + As2O5五酸化二ヒ素 + 3H2O水
⟶
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム

非金属と塩基，水の反応

ヒ素とアンモニア，水が反応すると，ヒ酸アンモニウムとアルシンが生成します。

ヒ素とアンモニア，水の反応
◆
ΔrG769.74 kJ/mol
K0.14 × 10−134
pK134.85
8Asヒ素 + 9NH3アンモニア + 12H2O水
🔥
⟶
3(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 5AsH3アルシン

化学反応

電離反応

ヒ酸アンモニウムが電離すると，アンモニウムイオンとヒ酸イオンが生成します。

ヒ酸アンモニウムの電離
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
⟶
3NH4+アンモニウムイオン + AsO43−ヒ酸イオン

強酸との反応

ヒ酸アンモニウムと強酸が反応すると，強酸の塩とヒ酸が生成します。

ヒ酸アンモニウムと塩化水素の反応
◆
ΔrG−117.6 kJ/mol
K4.01 × 1020
pK−20.60
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3HCl塩化水素
⟶
3NH4Cl塩化アンモニウム + H3AsO4ヒ酸
ヒ酸アンモニウムと臭化水素の反応
◆
ΔrG−117.6 kJ/mol
K4.01 × 1020
pK−20.60
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3HBr臭化水素
⟶
3NH4Br臭化アンモニウム + H3AsO4ヒ酸
ヒ酸アンモニウムとヨウ化水素の反応
◆
ΔrG−117.6 kJ/mol
K4.01 × 1020
pK−20.60
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3HIヨウ化水素
⟶
3NH4Iヨウ化アンモニウム + H3AsO4ヒ酸
ヒ酸アンモニウムと硝酸の反応
◆
ΔrG−117.6 kJ/mol
K4.01 × 1020
pK−20.60
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3HNO3硝酸
⟶
3NH4NO3硝酸アンモニウム + H3AsO4ヒ酸
ヒ酸アンモニウムと過塩素酸の反応
◆
ΔrG−117.6 kJ/mol
K4.01 × 1020
pK−20.60
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3HClO4過塩素酸
⟶
3NH4ClO4過塩素酸アンモニウム + H3AsO4ヒ酸

強塩基との反応

ヒ酸アンモニウムと強塩基が反応すると，強塩基の塩とアンモニア，水が生成します。

ヒ酸アンモニウムと水酸化ナトリウムの反応
◆
ΔrG−51.10 kJ/mol
K8.96 × 108
pK−8.95
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3NaOH水酸化ナトリウム
⟶
Na3AsO4ヒ酸ナトリウム + 3NH3↑アンモニア + 3H2O水
ヒ酸アンモニウムと水酸化マグネシウムの反応
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3Mg(OH)2水酸化マグネシウム
⟶
Mg3(AsO4)2ヒ酸マグネシウム + 6NH3↑アンモニア + 6H2O水
ヒ酸アンモニウムと水酸化カリウムの反応
◆
ΔrG−51.15 kJ/mol
K9.14 × 108
pK−8.96
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3KOH水酸化カリウム
⟶
K3AsO4ヒ酸カリウム + 3NH3↑アンモニア + 3H2O水
ヒ酸アンモニウムと水酸化カルシウムの反応
◆
ΔrG−116.4 kJ/mol
K2.47 × 1020
pK−20.39
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3Ca(OH)2水酸化カルシウム
⟶
Ca3(AsO4)2ヒ酸カルシウム + 6NH3↑アンモニア + 6H2O水

不揮発性の塩基との反応

ヒ酸アンモニウムと不揮発性の塩基が反応すると，不揮発性の塩基の塩とアンモニア，水が生成します。

ヒ酸アンモニウムと水酸化鉄(III)の反応
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + Fe(OH)3水酸化鉄(III)
🔥
⟶
FeAsO4ヒ酸鉄(III) + 3NH3↑アンモニア + 3H2O水
ヒ酸アンモニウムと水酸化亜鉛の反応
◆
ΔrG−76 kJ/mol
K2.06 × 1013
pK−13.31
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3Zn(OH)2水酸化亜鉛
🔥
⟶
Zn3(AsO4)2ヒ酸亜鉛 + 6NH3↑アンモニア + 6H2O水

酸化性化学種との反応

ヒ酸アンモニウムと酸化性化学種が反応すると，種々の生成物が生成します。

ヒ酸アンモニウムと酸素の反応
◆
ΔrG−3515.7 kJ/mol
K8.39 × 10615
pK−615.92
4(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 21O2酸素
⟶
12NO2二酸化窒素 + 4H3AsO4ヒ酸 + 18H2O水
ヒ酸アンモニウムと硝酸の反応
◆
ΔrG−290.9 kJ/mol
K9.19 × 1050
pK−50.96
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 5HNO3硝酸
⟶
8NO↑一酸化窒素 + H3AsO4ヒ酸 + 7H2O水
ヒ酸アンモニウムと酸素の反応
◆
ΔrG−2994.4 kJ/mol
K3.95 × 10524
pK−524.60
4(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 15O2酸素
⟶
12NO一酸化窒素 + 4H3AsO4ヒ酸 + 18H2O水
ヒ酸アンモニウムと硝酸の反応
◆
ΔrG−656.1 kJ/mol
K8.79 × 10114
pK−114.94
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3HNO3硝酸
⟶
3N2O↑一酸化二窒素 + H3AsO4ヒ酸 + 6H2O水

還元性化学種との反応

還元性化学種とヒ酸アンモニウムが反応すると，種々の生成物が生成します。

水素とヒ酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−311.1 kJ/mol
K3.18 × 1054
pK−54.50
5H2水素 + 2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
⟶
2Asヒ素 + 6NH3アンモニア + 8H2O水
水素とヒ酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−113.0 kJ/mol
K6.26 × 1019
pK−19.80
4H2水素 + (NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
⟶
AsH3アルシン + 3NH3アンモニア + 4H2O水
ナトリウムとヒ酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−595.94 kJ/mol
K2.54 × 10104
pK−104.40
8Naナトリウム + (NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
⟶
4Na2O酸化ナトリウム + AsH3↑アルシン + 3NH3↑アンモニア
ナトリウムとヒ酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−1194.32 kJ/mol
K1.72 × 10209
pK−209.24
6Naナトリウム + 2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
⟶
2Na3AsO4ヒ酸ナトリウム + 6NH3↑アンモニア + 3H2↑水素
硫化水素とヒ酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−119.6 kJ/mol
K8.97 × 1020
pK−20.95
8H2S硫化水素 + 2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
⟶
5S硫黄 + 2Asヒ素 + 3(NH4)2S硫化アンモニウム + 8H2O水

沈殿反応

水溶液中に特定の化学種が存在すると，ヒ酸アンモニウムと反応して沈殿が生成します。

塩化マグネシウムとヒ酸アンモニウムの反応
3MgCl2塩化マグネシウム + 2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
💧
⟶
Mg3(AsO4)2↓ヒ酸マグネシウム + 6NH4Cl塩化アンモニウム
臭化マグネシウムとヒ酸アンモニウムの反応
3MgBr2臭化マグネシウム + 2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
💧
⟶
Mg3(AsO4)2↓ヒ酸マグネシウム + 6NH4Br臭化アンモニウム
ヨウ化マグネシウムとヒ酸アンモニウムの反応
3MgI2ヨウ化マグネシウム + 2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
💧
⟶
Mg3(AsO4)2↓ヒ酸マグネシウム + 6NH4Iヨウ化アンモニウム
硝酸マグネシウムとヒ酸アンモニウムの反応
3Mg(NO3)2硝酸マグネシウム + 2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
💧
⟶
Mg3(AsO4)2↓ヒ酸マグネシウム + 6NH4NO3硝酸アンモニウム
塩化カルシウムとヒ酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−105.5 kJ/mol
K3.04 × 1018
pK−18.48
3CaCl2塩化カルシウム + 2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
💧
⟶
Ca3(AsO4)2↓ヒ酸カルシウム + 6NH4Cl塩化アンモニウム

分解反応

ヒ酸アンモニウムが分解すると，種々の生成物が生成します。

ヒ酸アンモニウムの分解
◆
ΔrG71.0 kJ/mol
K0.36 × 10−12
pK12.44
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
🔥
⟶
3NH3↑アンモニア + H3AsO4ヒ酸
ヒ酸アンモニウムの分解
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
🔥
⟶
6NH3↑アンモニア + As2O5五酸化二ヒ素 + 3H2O水
ヒ酸アンモニウムの分解
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
🔥
⟶
NH2OHヒドロキシルアミン + H3AsO3亜ヒ酸 + 2NH3↑アンモニア
ヒ酸アンモニウムの分解
◆
ΔrG624.9 kJ/mol
K0.33 × 10−109
pK109.48
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
🔥
⟶
3N2H4ヒドラジン + 2H3AsO4ヒ酸 + 3H2↑水素

水溶液の電気分解

ヒ酸アンモニウム水溶液を電気分解すると，種々の生成物が生成します。

ヒ酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水≠反応物)
◆
ΔrG624.9 kJ/mol
K0.33 × 10−109
pK109.48
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム
💧⚡
⟶
3N2H4ヒドラジン + 2H3AsO4ヒ酸 + 3H2↑水素
ヒ酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水=酸化剤)
◆
ΔrG3394.0 kJ/mol
K0.25 × 10−594
pK594.60
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 12H2O水
💧⚡
⟶
6NO2↑二酸化窒素 + 2H3AsO4ヒ酸 + 21H2↑水素
ヒ酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水=酸化剤)
◆
ΔrG2182.7 kJ/mol
K0.41 × 10−382
pK382.39
2(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 6H2O水
💧⚡
⟶
6NO↑一酸化窒素 + 2H3AsO4ヒ酸 + 15H2↑水素
ヒ酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水=非酸化還元剤)
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 2H2O水
💧⚡
⟶
3NH2OHヒドロキシルアミン + H3AsO3亜ヒ酸 + 2H2↑水素
ヒ酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水=非酸化還元剤)
(NH4)3AsO4ヒ酸アンモニウム + 3H2O水
💧⚡
⟶
3NH2OHヒドロキシルアミン + H3AsO4ヒ酸 + 3H2↑水素

参考文献

参考文献一覧

  1. 1
    Janiel J. Reed (1989)
    The NBS Tables of Chemical Thermodynamic Properties: Selected Values for Inorganic and C1 and C2 Organic Substances in SI Units
    National Institute of Standards and Technology (NIST)
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