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化学物質
ニッケル

ニッケル

更新日：2022/3/31

ニッケル（Nickel）は，化学式 Ni で表される遷移元素の単体です。

名称

物質名称一覧

命名法

Nomenclature

名称

Name

代表的名称
Typical name: ニッケル; Nickel

組成命名法
Compositional nomenclature: ニッケル; Nickel

化学式と構造

化学式一覧

化学式名称

Formula name

化学式

Formula

代表的化学式
Typical formula: Ni

組成式
Compositional formula: Ni

構造式
Structural formula

電子式 (ルイス構造式)
Lewis structure

電子式 (ルイス構造式, 色付き)
Colored Lewis structure

物質情報

物質情報一覧

項目

Item

値

Value

名称
Name: ニッケル; Nickel

化学式
Formula: Ni

外観
Appearance: 銀白色の固体; Silver white solid

臭気
Odor: 無臭; Odorless

モル質量
Molar mass: 58.6934 g/mol

密度
Density: 8.908 g/cm³^[1]
固体, 20°C; 8.90 g/cm³^[2]
固体

融点
Melting point: 1453 °C^[1]; 1455 °C^[2]

沸点
Boiling point: 2884 °C^[1]; 2913 °C^[2]

構成要素

構成原子

原子 Atom	名称 Name	酸化数 Oxidation state	個数 Number
Ni	ニッケル	0	1

原子の比率

原子 Atom	原子量 Atomic weight	個数 Number	原子比率 Atomic ratio	重量比率 Weight ratio
Ni	58.6934	1	100.00%	100.00%

熱力学的性質

相転移特性

項目

Item

値

Value

融解熱
Enthalpy of fusion: 17.48 kJ · mol⁻¹^[1][2]
at 1453°C

蒸発熱
Enthalpy of vaporization: 377.5 kJ · mol⁻¹^[1]
at 2884°C

蒸発熱 (25°C)
Enthalpy of vaporization at 25°C: –

その他転移エンタルピー
Enthalpy of other transition: –

標準熱力学特性

状態 State	標準生成エンタルピー Δ_fH° kJ · mol⁻¹	標準生成ギブスエネルギー Δ_fG° kJ · mol⁻¹	標準モルエントロピー S° J · K⁻¹ · mol⁻¹	標準モル定圧熱容量 C_p° J · K⁻¹ · mol⁻¹
結晶性固体	0^[3]	0^[3]	29.87^[3]	26.07^[3]
気体	429.7^[3]	384.5^[3]	182.193^[3]	23.359^[3]

溶解度

溶解性

反応 Reactive

混和 Miscible

易溶 Very soluble

可溶 Soluble: HNO₃^[1]硝酸

微溶 Slightly soluble

難溶 Very slightly soluble

不溶 Insoluble: H₂O^[1]水

不動態化 Passivated: HNO₃濃硝酸

危険有害性

GHSラベル^[4]

項目

Item

値

Value

危険有害性絵表示
Hazard pictograms: GHS08: 健康有害性; GHS07: 感嘆符

注意喚起語
Signal word: 危険

危険有害性情報
Hazard statements: H334: 吸入するとアレルギー, 喘息, 呼吸困難のおそれ; H317: アレルギー性皮膚反応のおそれ; H351: 発がんのおそれの疑い; H370: 臓器への傷害; H370: 呼吸器系への傷害; H370: 腎臓への傷害; H372: 長期, または反復ばく露による臓器への傷害; H372: 長期, または反復ばく露による呼吸器系への傷害

物理的危険性^[4]

分類	区分	表示	危険有害性情報
爆発物	分類対象外
引火性気体	分類対象外
エアゾール	分類対象外
酸化性気体	分類対象外
高圧ガス	分類対象外
引火性液体	分類対象外
引火性固体	分類不可 (データ不足)
自己反応性化学品	分類対象外
自然発火性液体	分類対象外
自然発火性固体	区分外
自己発熱性化学品	分類不可 (データ不足)
水反応引火性化学品	区分外
酸化性液体	分類対象外
酸化性固体	分類対象外
有機過酸化物	分類対象外
金属腐食性物質	分類不可 (データ不足)
鈍性化爆発物	データなし

健康有害性^[4]

分類	区分	表示	危険有害性情報
急性経口毒性	区分外
急性経皮毒性	分類不可 (データ不足)
急性吸入毒性 (気体)	分類対象外
急性吸入毒性 (蒸気)	分類不可 (データ不足)
急性吸入毒性 (粉塵・ミスト)	分類不可 (データ不足)
皮膚腐食性/刺激性	分類不可 (データ不足)
重篤な眼損傷性/眼刺激性	分類不可 (データ不足)
呼吸器感作性	区分1	危険	H334: 吸入するとアレルギー, 喘息, 呼吸困難のおそれ
皮膚感作性	区分1	警告	H317: アレルギー性皮膚反応のおそれ
生殖細胞変異原性	分類不可 (データ不足)
発がん性	区分2	警告	H351: 発がんのおそれの疑い
生殖毒性	分類不可 (データ不足)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)	区分1 (呼吸器系, 腎臓)	危険	H370: 臓器への傷害 H370: 呼吸器系への傷害 H370: 腎臓への傷害
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)	区分1 (呼吸器系)	危険	H372: 長期, または反復ばく露による臓器への傷害 H372: 長期, または反復ばく露による呼吸器系への傷害
誤えん有害性	分類不可 (データ不足)

環境有害性^[4]

分類	区分	表示	危険有害性情報
水生環境有害性 (短期)	分類不可 (データ不足)
水生環境有害性 (長期)	分類不可 (データ不足)
オゾン層への有害性	分類不可 (データ不足)

製法

還元性非金属と酸化物の反応

還元性非金属と酸化物が反応すると，ニッケルが生成する場合があります。

水素と酸化ニッケル(II)の反応 ◆ Δ_rG −25.4 kJ/mol K 2.82 × 10⁴ pK −4.45: H₂水素 + NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + H₂O水

炭素と酸化ニッケル(II)の反応 ◆ Δ_rG 74.5 kJ/mol K 0.89 × 10⁻¹³ pK 13.05: C炭素 + NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + CO↑一酸化炭素

分解反応

熱分解性物質が分解すると，ニッケルが生成する場合があります。

硫化ニッケル(II)の分解 ◆ Δ_rG 79.5 kJ/mol K 0.12 × 10⁻¹³ pK 13.93: NiS硫化ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + S硫黄

水酸化ニッケル(II)の分解 ◆ Δ_rG 326.9 kJ/mol K 0.54 × 10⁻⁵⁷ pK 57.27: Ni(OH)₂水酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + H₂O₂過酸化水素

炭酸ニッケル(II)の分解 ◆ Δ_rG 475.3 kJ/mol K 0.54 × 10⁻⁸³ pK 83.27: NiCO₃炭酸ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + O₂↑酸素 + CO↑一酸化炭素

硫酸ニッケル(II)の分解 ◆ Δ_rG 459.5 kJ/mol K 0.32 × 10⁻⁸⁰ pK 80.50: NiSO₄硫酸ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + SO₂↑二酸化硫黄 + O₂↑酸素

硫酸ニッケル(II)の分解 ◆ Δ_rG 759.7 kJ/mol K 0.81 × 10⁻¹³³ pK 133.09: NiSO₄硫酸ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + S硫黄 + 2O₂↑酸素

化学反応

非金属との反応

ニッケルと非金属が反応すると，ニッケルの二元化合物が生成します。

ニッケルと酸素の反応 ◆ Δ_rG −423.4 kJ/mol K 1.50 × 10⁷⁴ pK −74.18: 2Niニッケル + O₂酸素
⟶
2NiO酸化ニッケル(II)

ニッケルと塩素の反応 ◆ Δ_rG −259.032 kJ/mol K 2.40 × 10⁴⁵ pK −45.38: Niニッケル + Cl₂塩素
⟶
NiCl₂塩化ニッケル(II)

ニッケルと硫黄の反応 ◆ Δ_rG −79.5 kJ/mol K 8.47 × 10¹³ pK −13.93: Niニッケル + S硫黄
⟶
NiS硫化ニッケル(II)

ニッケルとオゾンの反応 ◆ Δ_rG −798.3 kJ/mol K 7.18 × 10¹³⁹ pK −139.86: 3Niニッケル + O₃オゾン
⟶
3NiO酸化ニッケル(II)

酸との反応

ニッケルと酸が反応すると，塩と水素が生成します。

ニッケルと塩化水素の反応 ◆ Δ_rG −68.434 kJ/mol K 9.75 × 10¹¹ pK −11.99: Niニッケル + 2HCl塩化水素
⟶
NiCl₂塩化ニッケル(II) + H₂水素

ニッケルと硫化水素の反応 ◆ Δ_rG −45.9 kJ/mol K 1.10 × 10⁸ pK −8.04: Niニッケル + H₂S硫化水素
⟶
NiS硫化ニッケル(II) + H₂水素

ニッケルと硫酸の反応 ◆ Δ_rG −69.7 kJ/mol K 1.63 × 10¹² pK −12.21: Niニッケル + H₂SO₄硫酸
⟶
NiSO₄硫酸ニッケル(II) + H₂↑水素

ニッケルと硝酸の反応 ⚠️ この反応は，不動態または不溶性の表層の形成により進行しない可能性があります ◆ Δ_rG −46.0 kJ/mol K 1.15 × 10⁸ pK −8.06: Niニッケル + 2HNO₃硝酸
⟶
Ni(NO₃)₂硝酸ニッケル(II) + H₂↑水素

ニッケルと炭酸の反応 ◆ Δ_rG 10.6 kJ/mol K 0.14 × 10⁻¹ pK 1.86: Niニッケル + H₂CO₃炭酸
🔥
⟶
NiCO₃炭酸ニッケル(II) + H₂↑水素

水との反応

ニッケルと水が反応すると，水酸化物塩基/塩基性酸化物と水素が生成します。

ニッケルと水の反応 ◆ Δ_rG 25.4 kJ/mol K 0.35 × 10⁻⁴ pK 4.45: Niニッケル + H₂O水
🔥
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + H₂↑水素

ニッケルと水の反応 ◆ Δ_rG 27.1 kJ/mol K 0.18 × 10⁻⁴ pK 4.75: Niニッケル + 2H₂O水
🔥
⟶
Ni(OH)₂水酸化ニッケル(II) + H₂↑水素

酸性酸化物と水との反応

ニッケルと酸性酸化物，水が反応すると，塩と水素が生成します。

ニッケルと三酸化硫黄，水の反応 ◆ Δ_rG −148.8 kJ/mol K 1.17 × 10²⁶ pK −26.07: Niニッケル + SO₃三酸化硫黄 + H₂O水
⟶
NiSO₄硫酸ニッケル(II) + H₂↑水素

ニッケルと二酸化炭素，水の反応 ◆ Δ_rG 19.0 kJ/mol K 0.47 × 10⁻³ pK 3.33: Niニッケル + CO₂二酸化炭素 + H₂O水
🔥
⟶
NiCO₃炭酸ニッケル(II) + H₂水素

ニッケルと五酸化二窒素，水の反応 ◆ Δ_rG −145.3 kJ/mol K 2.85 × 10²⁵ pK −25.46: Niニッケル + N₂O₅五酸化二窒素 + H₂O水
⟶
Ni(NO₃)₂硝酸ニッケル(II) + H₂↑水素

酸化性化学種との反応

ニッケルと酸化性化学種が反応すると，種々の生成物が生成します。

ニッケルと過マンガン酸カリウムの反応 ◆ Δ_rG −631.2 kJ/mol K 3.81 × 10¹¹⁰ pK −110.58: 5Niニッケル + 2KMnO₄過マンガン酸カリウム
⟶
5NiO酸化ニッケル(II) + 2MnO酸化マンガン(II) + K₂O酸化カリウム

ニッケルと過マンガン酸カリウムの反応 ◆ Δ_rG −574.8 kJ/mol K 5.02 × 10¹⁰⁰ pK −100.70: 4Niニッケル + 2KMnO₄過マンガン酸カリウム
⟶
4NiO酸化ニッケル(II) + Mn₂O₃酸化マンガン(III) + K₂O酸化カリウム

ニッケルと硝酸の反応 ⚠️ この反応は，不動態または不溶性の表層の形成により進行しない可能性があります ◆ Δ_rG −195.1 kJ/mol K 1.51 × 10³⁴ pK −34.18: Niニッケル + 4HNO₃硝酸
⟶
Ni(NO₃)₂硝酸ニッケル(II) + 2NO₂↑二酸化窒素 + 2H₂O水

被還元性化学種との反応

ニッケルと被還元性化学種が反応すると，種々の生成物が生成します。

ニッケルと二酸化炭素の反応 ◆ Δ_rG −41.9 kJ/mol K 2.19 × 10⁷ pK −7.34: 2Niニッケル + 3CO₂二酸化炭素
⟶
2NiCO₃炭酸ニッケル(II) + C炭素

ニッケルと三酸化硫黄の反応 ◆ Δ_rG −784.1 kJ/mol K 2.34 × 10¹³⁷ pK −137.37: 3Niニッケル + 4SO₃三酸化硫黄
⟶
3NiSO₄硫酸ニッケル(II) + S硫黄

ニッケルと酸化マンガン(IV)の反応 ◆ Δ_rG −109.5 kJ/mol K 1.53 × 10¹⁹ pK −19.18: Niニッケル + MnO₂酸化マンガン(IV)
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + MnO酸化マンガン(II)

ニッケルと酸化マンガン(IV)の反応 ◆ Δ_rG −162.5 kJ/mol K 2.94 × 10²⁸ pK −28.47: Niニッケル + 2MnO₂酸化マンガン(IV)
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + Mn₂O₃酸化マンガン(III)

ニッケルと酸化鉄(III)の反応 ◆ Δ_rG −15.9 kJ/mol K 6.10 × 10² pK −2.79: Niニッケル + 3Fe₂O₃酸化鉄(III)
🔥
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + 2Fe₃O₄酸化鉄(II,III)

参考文献

参考文献一覧

1
James G. Speight (2017)
Lange's Handbook of Chemistry, 17th edition
https://www.accessengineeringlibrary.com/content/book/9781259586095
McGraw Hill Education
- Amazon
引用リスト
- ^ 密度, 8.908 g/cm³ - p.53
- ^ 融点, 1453 °C - p.53
- ^ 沸点, 2884 °C - p.53
- ^ 融解熱, 17.48 kJ · mol⁻¹ - p.305
- ^ 蒸発熱, 377.5 kJ · mol⁻¹ - p.305
- ^ 溶解性, 水に不溶 - p.41
- ^ 溶解性, 硝酸に可溶 - p.41
2
John R. Rumble Jr, David R. Lide, Thomas J. Bruno (2019)
CRC Handbook of Chemistry and Physics 100th Edition
https://www.routledge.com/CRC-Handbook-of-Chemistry-and-Physics/book-series/CRCHANCHEPHY
CRC Press
- Amazon
引用リスト
- ^ 密度, 8.90 g/cm³ - p.4-46
- ^ 融点, 1455 °C - p.4-46
- ^ 沸点, 2913 °C - p.4-46
- ^ 融解熱, 17.48 kJ · mol⁻¹ - p.6-158
3
Janiel J. Reed (1989)
The NBS Tables of Chemical Thermodynamic Properties: Selected Values for Inorganic and C1 and C2 Organic Substances in SI Units
https://doi.org/10.18434/M32124
National Institute of Standards and Technology (NIST)
引用リスト
4
化学物質管理センター
GHS分類結果
https://www.nite.go.jp/chem/ghs/all_fy.html
独立行政法人製品評価技術基盤機構
引用リスト

Δ_rG	−25.4 kJ/mol
K	2.82 × 10⁴
pK	−4.45

Δ_rG	74.5 kJ/mol
K	0.89 × 10⁻¹³
pK	13.05

Δ_rG	79.5 kJ/mol
K	0.12 × 10⁻¹³
pK	13.93

Δ_rG	326.9 kJ/mol
K	0.54 × 10⁻⁵⁷
pK	57.27

ニッケル

名称

物質名称一覧

化学式と構造

化学式一覧

物質情報

物質情報一覧

構成要素

構成原子

原子の比率

熱力学的性質

相転移特性

標準熱力学特性

溶解度

溶解性

危険有害性

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物理的危険性[4]

健康有害性[4]

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製法

還元性非金属と酸化物の反応

分解反応

化学反応

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酸との反応

水との反応

酸性酸化物と水との反応

酸化性化学種との反応

被還元性化学種との反応

参考文献

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関連物質

第10族元素の単体

ニッケルの化合物

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環境有害性^[4]