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酸化ニッケル(II)

更新日：
酸化ニッケル(II)の化学構造式

酸化ニッケル(II)（Nickel(II) oxide）は，化学式 NiO で表される無機化合物です。

目次
  1. 1名称
  2. 2化学式と構造
  3. 3物質情報
  4. 4構成要素
  5. 5熱力学的性質
  6. 6溶解度
  7. 7危険有害性
  8. 8製法
  9. 9化学反応
  10. 10参考文献
  11. 11関連物質
  12. 12関連カテゴリ
Amazon.jp で「酸化ニッケル(II)」を検索
Amazon.com で「Nickel(II) oxide」を検索

名称

物質名称一覧

命名法
Nomenclature
名称
Name
代表的名称
Typical name
酸化ニッケル(II)
Nickel(II) oxide
組成命名法
Compositional nomenclature
酸化ニッケル(II)
Nickel(II) oxide
一酸化ニッケル
Nickel monoxide
別名
Other names
酸化第一ニッケル
Nickelous oxide

化学式と構造

化学式一覧

化学式名称
Formula name
化学式
Formula
代表的化学式
Typical formula
NiO
組成式
Compositional formula
NiO
構造式
Structural formula
酸化ニッケル(II)の化学構造式
電子式 (ルイス構造式)
Lewis structure
酸化ニッケル(II)の電子式 (ルイス構造式)
電子式 (ルイス構造式, 色付き)
Colored Lewis structure
酸化ニッケル(II)の電子式 (ルイス構造式, 色付き)

物質情報

物質情報一覧

項目
Item
値
Value
名称
Name
酸化ニッケル(II)
Nickel(II) oxide
化学式
Formula
NiO
外観
Appearance
緑色の固体
Green solid
臭気
Odor
無臭
Odorless
モル質量
Molar mass
74.692 g/mol
密度
Density
7.45 g/cm3[1]
固体
融点
Melting point
2000 °C[1]
沸点
Boiling point
–

構成要素

構成イオン

イオン
Ion
名称
Name
電荷数
Charge number
個数
Number
Ni2+ニッケル(II)イオン21
O2−酸化物イオン-21

構成原子

原子
Atom
名称
Name
酸化数
Oxidation state
個数
Number
Niニッケル+21
O酸素−21

原子の比率

原子
Atom
原子量
Atomic weight
個数
Number
原子比率
Atomic ratio
重量比率
Weight ratio
Ni58.6934150.00%78.58%
O15.999150.00%21.42%
NiO原子比率
NiO重量比率

熱力学的性質

相転移特性

項目
Item
値
Value
融解熱
Enthalpy of fusion
50.7 kJ · mol−1[2]
at 1957°C
蒸発熱
Enthalpy of vaporization
–
蒸発熱 (25°C)
Enthalpy of vaporization at 25°C
–
その他転移エンタルピー
Enthalpy of other transition
–

標準熱力学特性

状態
State
標準生成
エンタルピー
ΔfH°
kJ · mol−1		標準生成
ギブス
エネルギー
ΔfG°
kJ · mol−1		標準モル
エントロピー
S°
J · K−1 · mol−1		標準モル
定圧熱容量
Cp°
J · K−1 · mol−1
結晶性固体−239.7[3]−211.7[3]37.99[3]44.31[3]
気体314.[3]–––

溶解度

溶解性

反応
Reactive
混和
Miscible
易溶
Very soluble
可溶
Soluble
HA[1]酸
微溶
Slightly soluble
難溶
Very slightly soluble
不溶
Insoluble
H2O水

危険有害性

GHSラベル[4]

項目
Item
値
Value
危険有害性絵表示
Hazard pictograms
GHS08: 健康有害性
GHS08: 健康有害性
GHS07: 感嘆符
GHS07: 感嘆符
注意喚起語
Signal word
危険
危険有害性情報
Hazard statements
H334: 吸入するとアレルギー, 喘息, 呼吸困難のおそれ
H317: アレルギー性皮膚反応のおそれ
H350: 発がんのおそれ
H372: 長期, または反復ばく露による臓器への傷害
H372: 長期, または反復ばく露による呼吸器系への傷害
H413: 水生生物に長期持続的な有害影響のおそれ

物理的危険性[4]

分類区分表示危険有害性情報
爆発物分類対象外
引火性気体分類対象外
エアゾール分類対象外
酸化性気体分類対象外
高圧ガス分類対象外
引火性液体分類対象外
引火性固体区分外
自己反応性化学品分類対象外
自然発火性液体分類対象外
自然発火性固体区分外
自己発熱性化学品区分外
水反応引火性化学品区分外
酸化性液体分類対象外
酸化性固体分類不可
(データ不足)
有機過酸化物分類対象外
金属腐食性物質分類不可
(データ不足)
鈍性化爆発物データなし

健康有害性[4]

分類区分表示危険有害性情報
急性経口毒性区分外
急性経皮毒性分類不可
(データ不足)
急性吸入毒性
(気体)		分類対象外
急性吸入毒性
(蒸気)		分類不可
(データ不足)
急性吸入毒性
(粉塵・ミスト)		分類不可
(データ不足)
皮膚腐食性/刺激性分類不可
(データ不足)
重篤な眼損傷性/眼刺激性分類不可
(データ不足)
呼吸器感作性区分1
GHS08: 健康有害性
危険
H334: 吸入するとアレルギー, 喘息, 呼吸困難のおそれ
皮膚感作性区分1
GHS07: 感嘆符
警告
H317: アレルギー性皮膚反応のおそれ
生殖細胞変異原性区分外
発がん性区分1A
GHS08: 健康有害性
危険
H350: 発がんのおそれ
生殖毒性分類不可
(データ不足)
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)		分類不可
(データ不足)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)		区分1
(呼吸器系)
GHS08: 健康有害性
危険
H372: 長期, または反復ばく露による臓器への傷害
H372: 長期, または反復ばく露による呼吸器系への傷害
誤えん有害性分類不可
(データ不足)

環境有害性[4]

分類区分表示危険有害性情報
水生環境有害性
(短期)		区分外
水生環境有害性
(長期)		区分4
H413: 水生生物に長期持続的な有害影響のおそれ
オゾン層への有害性データなし

製法

金属と非金属の反応

金属と非金属が反応すると，酸化ニッケル(II)が生成する場合があります。

ニッケルと酸素の反応
◆
ΔrG−423.4 kJ/mol
K1.50 × 1074
pK−74.18
2Niニッケル + O2酸素
⟶
2NiO酸化ニッケル(II)
ニッケルとオゾンの反応
◆
ΔrG−798.3 kJ/mol
K7.18 × 10139
pK−139.86
3Niニッケル + O3オゾン
⟶
3NiO酸化ニッケル(II)

水酸化物塩基と脱水性塩基性酸化物の反応

水酸化物塩基と脱水性塩基性酸化物が反応すると，酸化ニッケル(II)が生成する場合があります。

水酸化ニッケル(II)と酸化ナトリウムの反応
◆
ΔrG−148.0 kJ/mol
K8.48 × 1025
pK−25.93
Ni(OH)2水酸化ニッケル(II) + Na2O酸化ナトリウム
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + 2NaOH水酸化ナトリウム
水酸化ニッケル(II)と酸化カリウムの反応
◆
ΔrG−200.6 kJ/mol
K1.39 × 1035
pK−35.14
Ni(OH)2水酸化ニッケル(II) + K2O酸化カリウム
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + 2KOH水酸化カリウム
水酸化ニッケル(II)と酸化カルシウムの反応
◆
ΔrG−59.0 kJ/mol
K2.17 × 1010
pK−10.34
Ni(OH)2水酸化ニッケル(II) + CaO酸化カルシウム
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + Ca(OH)2水酸化カルシウム
水酸化ニッケル(II)と酸化ストロンチウムの反応
Ni(OH)2水酸化ニッケル(II) + SrO酸化ストロンチウム
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + Sr(OH)2水酸化ストロンチウム
水酸化ニッケル(II)と酸化ルビジウムの反応
Ni(OH)2水酸化ニッケル(II) + Rb2O酸化ルビジウム
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + 2RbOH水酸化ルビジウム

分解反応

熱分解性物質が分解すると，酸化ニッケル(II)が生成する場合があります。

水酸化ニッケル(II)の分解
◆
ΔrG−1.6 kJ/mol
K1.91 × 100
pK−0.28
Ni(OH)2水酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + H2O水
炭酸ニッケル(II)の分解
◆
ΔrG6.4 kJ/mol
K0.76 × 10−1
pK1.12
NiCO3炭酸ニッケル(II)
🔥
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + CO2↑二酸化炭素
炭酸ニッケル(II)の分解
◆
ΔrG400.8 kJ/mol
K0.61 × 10−70
pK70.22
NiCO3炭酸ニッケル(II)
🔥
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + O2↑酸素 + C炭素
硝酸ニッケル(II)の分解
◆
ΔrG196.3 kJ/mol
K0.41 × 10−34
pK34.39
Ni(NO3)2硝酸ニッケル(II)
🔥
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + N2O3↑三酸化二窒素 + O2↑酸素
炭酸ニッケル(II)の分解
◆
ΔrG527.3 kJ/mol
K0.42 × 10−92
pK92.38
2NiCO3炭酸ニッケル(II)
🔥
⟶
2NiO酸化ニッケル(II) + O2↑酸素 + 2CO↑一酸化炭素

活性金属と水の反応

ニッケルと水が反応すると，酸化ニッケル(II)と水素が生成します。

ニッケルと水の反応
◆
ΔrG25.4 kJ/mol
K0.35 × 10−4
pK4.45
Niニッケル + H2O水
🔥
⟶
NiO酸化ニッケル(II) + H2↑水素

化学反応

酸との反応

酸化ニッケル(II)と酸が反応すると，塩と水が生成します。

酸化ニッケル(II)と塩化水素の反応
◆
ΔrG−93.9 kJ/mol
K2.82 × 1016
pK−16.45
NiO酸化ニッケル(II) + 2HCl塩化水素
⟶
NiCl2塩化ニッケル(II) + H2O水
酸化ニッケル(II)と硫化水素の反応
◆
ΔrG−71.4 kJ/mol
K3.23 × 1012
pK−12.51
NiO酸化ニッケル(II) + H2S硫化水素
⟶
NiS硫化ニッケル(II) + H2O水
酸化ニッケル(II)と硫酸の反応
◆
ΔrG−95.1 kJ/mol
K4.58 × 1016
pK−16.66
NiO酸化ニッケル(II) + H2SO4硫酸
⟶
NiSO4硫酸ニッケル(II) + H2O水
酸化ニッケル(II)と硝酸の反応
◆
ΔrG−71.4 kJ/mol
K3.23 × 1012
pK−12.51
NiO酸化ニッケル(II) + 2HNO3硝酸
⟶
Ni(NO3)2硝酸ニッケル(II) + H2O水
酸化ニッケル(II)と炭酸の反応
◆
ΔrG−14.8 kJ/mol
K3.92 × 102
pK−2.59
NiO酸化ニッケル(II) + H2CO3炭酸
⟶
NiCO3炭酸ニッケル(II) + H2O水

酸性酸化物との反応

酸化ニッケル(II)と酸性酸化物が反応すると，オキソ酸塩が生成します。

酸化ニッケル(II)と三酸化硫黄の反応
◆
ΔrG−174.3 kJ/mol
K3.44 × 1030
pK−30.54
NiO酸化ニッケル(II) + SO3三酸化硫黄
⟶
NiSO4硫酸ニッケル(II)
酸化ニッケル(II)と二酸化炭素の反応
◆
ΔrG−6.4 kJ/mol
K1.32 × 101
pK−1.12
NiO酸化ニッケル(II) + CO2二酸化炭素
⟶
NiCO3炭酸ニッケル(II)
酸化ニッケル(II)と五酸化二窒素の反応
◆
ΔrG−170.7 kJ/mol
K8.04 × 1029
pK−29.91
NiO酸化ニッケル(II) + N2O5五酸化二窒素
⟶
Ni(NO3)2硝酸ニッケル(II)

水との反応

酸化ニッケル(II)と水が反応すると，水酸化ニッケル(II)が生成します。

酸化ニッケル(II)と水の反応
◆
ΔrG1.6 kJ/mol
K0.52 × 100
pK0.28
NiO酸化ニッケル(II) + H2O水
⟶
Ni(OH)2水酸化ニッケル(II)

還元性非金属との反応

還元性非金属と酸化ニッケル(II)が反応すると，単体/酸化物と非金属酸化物が生成します。

水素と酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG−25.4 kJ/mol
K2.82 × 104
pK−4.45
H2水素 + NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + H2O水
炭素と酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG74.5 kJ/mol
K0.89 × 10−13
pK13.05
C炭素 + NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
Niニッケル + CO↑一酸化炭素

還元性化学種との反応

還元性化学種と酸化ニッケル(II)が反応すると，種々の生成物が生成します。

ナトリウムと酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG−163.8 kJ/mol
K4.97 × 1028
pK−28.70
2Naナトリウム + NiO酸化ニッケル(II)
⟶
Na2O酸化ナトリウム + Niニッケル
水素と酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG−23.8 kJ/mol
K1.48 × 104
pK−4.17
H2水素 + 2NiO酸化ニッケル(II)
⟶
Niニッケル + Ni(OH)2水酸化ニッケル(II)
硫化水素と酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG8.1 kJ/mol
K0.38 × 10−1
pK1.42
H2S硫化水素 + NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
S硫黄 + Niニッケル + H2O水
炭素と酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG22.6 kJ/mol
K0.11 × 10−3
pK3.96
C炭素 + 3NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
2Niニッケル + NiCO3炭酸ニッケル(II)
硫化水素と酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG95.2 kJ/mol
K0.21 × 10−16
pK16.68
H2S硫化水素 + 5NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
NiSO4硫酸ニッケル(II) + 4Niニッケル + H2O水

被酸化性化学種との反応

被酸化性化学種と酸化ニッケル(II)が反応すると，種々の生成物が生成します。

酸化鉄(II)と酸化ニッケル(II)の反応
2FeO酸化鉄(II) + NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
Fe2O3酸化鉄(III) + Niニッケル
銅と酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG82.0 kJ/mol
K0.43 × 10−14
pK14.37
Cu銅 + NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
CuO酸化銅(II) + Niニッケル
銅と酸化ニッケル(II)の反応
◆
ΔrG65.7 kJ/mol
K0.31 × 10−11
pK11.51
2Cu銅 + NiO酸化ニッケル(II)
🔥
⟶
Cu2O酸化銅(I) + Niニッケル

酸化性化学種との反応

酸化ニッケル(II)と塩素が反応すると，塩化ニッケル(II)と酸素が生成します。

酸化ニッケル(II)と塩素の反応
◆
ΔrG−94.7 kJ/mol
K3.90 × 1016
pK−16.59
2NiO酸化ニッケル(II) + 2Cl2塩素
⟶
2NiCl2塩化ニッケル(II) + O2酸素

参考文献

参考文献一覧

  1. 1
    James G. Speight (2017)
    Lange's Handbook of Chemistry, 17th edition
    McGraw Hill Education
  2. 2
    John R. Rumble Jr, David R. Lide, Thomas J. Bruno (2019)
    CRC Handbook of Chemistry and Physics 100th Edition
    CRC Press
  3. 3
    Janiel J. Reed (1989)
    The NBS Tables of Chemical Thermodynamic Properties: Selected Values for Inorganic and C1 and C2 Organic Substances in SI Units
    National Institute of Standards and Technology (NIST)
    • 4
      化学物質管理センター
      GHS分類結果
      独立行政法人 製品評価技術基盤機構
      Amazon.jp で「酸化ニッケル(II)」を検索
      Amazon.com で「Nickel(II) oxide」を検索